少なくとも1つの種、ヤマトシジミ(チョウ)はそうした放射線の被ばくに脆弱(ぜいじゃく)なことがわかった。先週「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された論文(英文)によると、ヤマトシジミの奇形率が高くなっているという。
このことは新たな疑問を呼ぶ-それは、人間でも奇形や死亡の確率が高まることを意味するのか。そう結論付けるのは、まだ早いようだ。
日本人科学者のチームは、昨年3月11日から2カ月後に福島県で収集したヤマトシジミの子の間で突然変異が著しく増えていることを発見した。
変異には、口肢(こうし)や付節の発達障害、目の傷、羽のしわや発達障害があった。
最初の標本から4カ月後に収集したチョウでは奇形がさらに増えており、研究者らは「低線量放射能を継続的に被ばくしたことで(汚染した葉の摂取などによる)突然変異蓄積が起こった」可能性を挙げている。
研究を主導した琉球大学の大瀧丈二准教授によれば、そうした奇形は、チョウを比較的強い放射線(1カ月の生涯を通じて55ミリシーベルト)にさらせ ば実験室で再現される可能性がある。論文は「観察された異常な表現型は、放射線被ばくが引き起こした突然変異が原因である公算が大きい」と結論づけてい る。
大瀧氏によれば、東京など他の地域で遺伝子変異の目立った増加はなかった。
では、人類にとってどんな意味があるか。あまり大きな意味はないようだ。
放射線に対する耐性の度合いは種によって違う。昆虫でも、カイコガとウリミバエなど一部の種は放射線への耐性が強いことで知られる。大瀧氏によると、人への影響についてはわかっておらず、放射線への感度は種によって違うという。
福島県には、経済的な理由から転出できず、県内の立ち入り禁止でない地域にとどまっている住民も多い。