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2012年10月12日金曜日

フクシマウォッチ:原発事故後にチョウの奇形が増加 - ウォール・ストリート・ジャーナル

人類も含め、種はどれほど放射線に脆弱(ぜいじゃく)なのか。

福島第1原発周辺で採集された
奇形のヤマトシジミ(下)
上は正常な個体
これは福島第1原発周辺の人たちが直面している大きな問題だ。政府は重大でないとしているものの健康への長期的な影響がわからない低線量放射線と日々接することを余儀なくされているのだから。

少なくとも1つの種、ヤマトシジミ(チョウ)はそうした放射線の被ばくに脆弱(ぜいじゃく)なことがわかった。先週「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された論文(英文)によると、ヤマトシジミの奇形率が高くなっているという。

このことは新たな疑問を呼ぶ-それは、人間でも奇形や死亡の確率が高まることを意味するのか。そう結論付けるのは、まだ早いようだ。

日本人科学者のチームは、昨年3月11日から2カ月後に福島県で収集したヤマトシジミの子の間で突然変異が著しく増えていることを発見した。

変異には、口肢(こうし)や付節の発達障害、目の傷、羽のしわや発達障害があった。


最初の標本から4カ月後に収集したチョウでは奇形がさらに増えており、研究者らは「低線量放射能を継続的に被ばくしたことで(汚染した葉の摂取などによる)突然変異蓄積が起こった」可能性を挙げている。

研究を主導した琉球大学の大瀧丈二准教授によれば、そうした奇形は、チョウを比較的強い放射線(1カ月の生涯を通じて55ミリシーベルト)にさらせ ば実験室で再現される可能性がある。論文は「観察された異常な表現型は、放射線被ばくが引き起こした突然変異が原因である公算が大きい」と結論づけてい る。

大瀧氏によれば、東京など他の地域で遺伝子変異の目立った増加はなかった。

では、人類にとってどんな意味があるか。あまり大きな意味はないようだ。

放射線に対する耐性の度合いは種によって違う。昆虫でも、カイコガとウリミバエなど一部の種は放射線への耐性が強いことで知られる。大瀧氏によると、人への影響についてはわかっておらず、放射線への感度は種によって違うという。
獨協医科大学の木村真三准教授は「(論文の結論を)人間に置き換えるのは危険。1種類のチョウで影響があるかもしれないということであり、人にあてはまるかはわからない」と述べた。ただ、低線量被ばくの影響については「看過すべきではない」としている。

福島県には、経済的な理由から転出できず、県内の立ち入り禁止でない地域にとどまっている住民も多い。